【認識してくれない】

三成と現世で出会った時、恐怖と喜びとがないまぜになった。


秀吉が居ない、
半兵衛も居ない、
戦もない、

ワシは嬉しかった。
会いたくて会いたくて仕方が無かった。

三成がワシを恨んでは居たとしても、この平和な世で、もう一度絆を繋げられるはずだ。

「みつ…」

お互いを認識して、通り過ぎるその時、無視をされた。

それが、お前の答えなのか?

絶対に諦めなどしないワシは、キャンパスで三成を見かける度に話しかけた。
だが、ことごとく無視をされた。

どうやら本当にワシが見えないのだと気付いたのは、何日か後の事だった。

「三成!何故ワシを無視するんだ!」

いい加減に、三成の腕を掴み、向き合った時に、三成は、酷く驚いた顔をした。

「前世であんな事が有ったが、ワシはお前を思い、忘れた事が無かった!」

「 ?!」

「みつ…なり?」

一世一代の思いをひと息に言い放ったが、三成は、眉間に皺を寄せて、力いっぱい動こうとしていた。

「なんなんだこれは?」

小さな声で呟いている。

恐る恐る、三成の眼前のすぐ前に拳を近付けたが、瞬き一つしない。

「もしかして、ワシが見えないのか?…聞こえないのか?」

聞く声は震えていた。
返答は帰って来ない。

腕を放すと、不思議そうな素振りで、辺りを見渡し、再び歩いて行った。

ワシは、呆然と立ち尽くした。

ワシが見えない?
何故?
ああかもしれない、こうかもしれないと考える全てが、己への罪罰ばかりだ。


同学生の、政宗と幸村に相談し、にわかに信じられない2人に色々と試された。

ワシのライフはとっくに、ゼロなのだが…。

政宗も幸村も、ワシが見えない件に納得した後は、三成と普通に仲良くしている。
前世の話もするが、三成の中で丸っと、ワシの名前が抜けていて、ワシが発言しても、政宗と幸村にしか聞こえていない。
幸村に通訳をして貰っても、家康?誰だそれは?状態。


三成に認識されぬ世など、生きていても意味がない。
でも、そこには三成が存在していて…。

もういい。
「三成が見れるだけで、ワシもう、いい」

弱々しく吐露した言葉に、政宗と幸村は、同情の顔を向けた。

どうやったら、ワシが見えるようになるのか…。

それから、三成の元に、いえ…何とかと言う人物から、好物だの、好きな本だの、様々な物が机に置いて有ったりした。
よく分からなかったので、全てゴミ箱へ行く。

その様子を家康は、肩を落としながら見ていた。



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