超展開注意


【言いたい事が山程ある】


見ず知らずの子供を救おうとしたのだ。
何故、私がそんな事をしたのかだと?
私の機敏性なら間に合う範囲内だったからだ。

私にだって、この平和な世の中で、道徳性ぐらいある。

迫り来る車、路上の子供を抱え、今まさに車を避ける寸前に押された背中。

驚いて振り返ると、短髪の青年が、かつて私が居た場所に倒れている。

子供は泣き出し走り去り、車の運転手は目を見開いた後、走り去った。

私はそこへ座り込んだ。

青年は、頭から出血している。

ヨロヨロと膝立ちになり、太陽に照らされたその顔は、こちらを見て、力なく微笑んだ。

この男は、何故私を助けたのだ?余計な事を…

瞬時に、ブワッと、私の中の塞き止められていた回路が解放され、恐ろしいスピードで、『徳川家康』を繋ぐ。


青年の隣りに、そんなに頭が痛いのなら忘れても良いと言った、黄色い甲冑姿の徳川家康が居て、スーッと消えた。
何かを呟いて微笑んで居た。

貴様…!
貴様の仕業ではないか。
三成は、自分が相手を見えていなかった事などすっかり忘れている。

怒り。

「貴様!馬鹿ではないか!笑うな!喋るな!許さない!」


何も喋ってなど居ない、現世の家康の肩口を掴み揺らす。


「ワシが…見えるのか!」
家康は、目を輝かせ、喜々とした。

「嬉しいが、あまり揺らさないでくれ。」

血が流れる顔を見て、三成は手を放した。
放したのに、ガバッと抱きしめられた。

「放せ!」

初めから三成と一緒に歩いて居て、始終見ていた元就が、飲んでいたシェイクを吹き出す。

どよめきの中、

誰かが呼んだ救急車が到着し、家康は救急隊員に促され、照れながら車内へ乗る。
三成も同乗する。


「…三成。」

「なんだ?」

「いや、ワシが見えているんだなと思って。」

家康は赤面して微笑む。
 
「ここで、それを言ったらコロス」

バイタルを測りながら、傷の処置をしていた救急隊員が、二人を二度見した。

かたや、負傷しているのに幸せそうにニコニコしていて、無傷のシャツが血だらけのもう一人は、激怒している。




―続くかも―




※車は時速30`くらいなんでしょうか。警察仕事しない。