※関ヶ原後、生かされている三成に政宗が会った話し。
「まさか、あんたが生きていて、こんな所に幽閉されていたとはな…」
幽閉?
政宗は自分の発言に違和感を覚える。
枷などは見られない。
監禁では無く、やはり幽閉だ。
「貴様は、伊達」
「…良く覚えてたな。」
頭もしっかりしている。
何故だ?何をしているんだ?
着物を一枚纏った姿は、見慣れた甲冑姿より、一段とほっそりして見える。
「あんた、何で逃げねえんだ?腱でも切られてんのか?」
つい、想像し得る事を言ってしまった。
「どこに逃げろと言うのだ?それより……こせ」
「ha ?」
ずっと釘付けになっている視線の先を辿る。
「刀を…一振り貸してくれ。」
???
何を言うかと思えば、あの石田三成が、頼み事をしてきた。
頬が紅くなっている。
おいおい、これが、凶王と呼ばれていた男か…。
余程、刀が欲しいのだろう。
「なにする気だよ?」
言いながら、六爪の内1本を貸してやった。
普段は絶対に誰にも貸さねえが、
何をするのか見たかった。
変な事をしたらすぐに止めれる自信も有った。
石田は、刀を握るなり、シュッと、目にも止まらぬ早さの居合いで空を切り裂く。
「…やはり、私の刀とは違うな。」
目に捉えられない早さだったが、これでも遅いらしい。
腱を切られているなんて、とんでもなかった。
「何がしてえんだ?」
「刀を振りたいが、返して貰えん。」
「そりゃあ…」
そうだろうよ。物騒だから。
細い刀身の、鍔が二段ある三成の愛刀を思い出す。
いつも、紫色のオーラで包まれていたが、今は自分の刀が、三成の紫色のオーラの先に蒼を小さく纏わせている。
「伊達、手合わせしないか?」
「お前が…」
今のお前が俺に対抗出来るとでも?
ずっと刀を振るっていねえし、体力も落ちている。
否応なしに、見覚えの有る弧を書き、シュッと、素早く動いた刀の先を受け止める。
「おいおい」
「貴様は五爪になり、不利だろう。」
「冗談、今なら一爪くらいで五分だろ」
言うや否や、地面から、縦に長い波動の剣戟が繰り出される。
着流し姿で繰り出される技に、何故か惚れ惚れした。
「てめぇの刀じゃ無くても出来んのかよ?!」
威力は全く衰えていない。
我慢してた反動か?
衝撃波が、音をたてて、建物を破壊する。
「!?」
技の構えをすると、石田との間合いに、黄色い影が降ってきた。
「何してるんだ!?」
家康は、俺に威嚇すると、すぐさま石田を見る。
石田は、さっきまでのイキイキした様子が嘘のように、押し黙って動かない。
「三成、ケガは?何をしているんだ!」
石田は黙ったまま歩き、俺の刀を返して来た。
「悪かった」
「ああ…。俺達は手合わせしていたんだ。てめぇが過保護にしてっから、つまんねーんじゃねえのか?将軍様。」
「こんな所でしなくても良いだろう」
小さな庭を指さして家康は笑う。
相変わらず喰えねえ野郎だ。
怒りを殺しているのは分かっている。
「邪魔したな。また遊びに来てやってもいいぜ。今度は広え場所を用意しとけよ。」
政宗はヒラヒラと手を振る。
石田が可哀相だ。
敗軍の将にそんな形容は変だが、
家康への態度が明らかに違い、違和感を覚えた。