吉継+三成
マジ権現嫌い三成
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「ここは,,,」
闇しかない場所だった。
どのくらいだろう?随分さ迷った。
自分の周りだけが蒼白く光っている。
「三成」
「刑部!」
闇にポウッと浮かぶ人影を見つけた。
薄赤い光の中に、一番親しい人間が居て安堵した。
「私は、死んだのか?」
「三成、ぬしは死んではおらぬ。」
「どういう事だ!?」
死んだと思った。
家康と刃を交え、自分は負けた。
万が一、相討ちでも、ここは現実では無い。
「三成、聞きやれ。」
一呼吸置き、大谷はいつもと変わらない調子で、喋る。
「ぬしは、目覚めたら、徳川の城
の中よ。」
「…どう言う事だ?」
「聡いぬしなら言わずとも分かろ。そう言う事よ。」
「!!」
「三成、ここでまで叫ばんでくれ。ぬしは今までに充分叫んだ。もうよかろ?」
大谷は微笑む。
「刑部、あの馬鹿狸は、私を生けどりにしたのだな。」
「…ああ。」
三成は、意外と冷静にしている。
「お前は、もう、この世には居ないのだな。」
「…ああ。」
三成の瞳が揺れる。
「刑部、私はいつ処刑されるだろう?」
「三成、我はな、ぬしが言いたい事は全て分かる。落ちついて聞きやれ。ぬしは、処刑されぬ。」
三成は、潤んでいた両の目を見開き、こちらを見つめると、凍りついたように動かず、青ざめていく。
「私の考えていることが分かるのか?……私が考えて居る事は当たっているか?」
「ああ、当たっておる。三成、我は主に知恵を貸しに来た。」
三成が激昂する前に、話しをする。
嘆き苦しむ姿をもう見たくないのだ。
「知恵だと?」
「さようよ。」
三成の顔が歪む。
「刑部!私は死にたい!この期に及んで…生き恥を…。私は、いよいよ秀吉様と半兵衛様に顔向け出来なくなる!…刑部…お前と、お二人の元へ行きたい。」
三成は、何かが切れたように、涙を流す。今まで我慢していた物が決壊したように、美しい瞳からポロポロとせめぎ溢れる。
「三成、ぬしは、もう叫ぶな。」
涙を掬ってあげたくても、肉体に触れる身体が無い。
「私は、…もう自分で居られなくなるかもしれない。」
子供が泣くように、しゃくりあげながら、やっと話している。
「お二人はな、死して長く、もう遠くへ行きやったから、ここへは来れぬのよ。ぬしは、徳川の稚児なぞやらずともよい。」
いや、させるものか。
「刑部…」
三成は、涙を止めて顔を上げる。 ふと、冷静になったらしい。
「私は、自決しよう。」
「三成、早まらずともよい。」
そもそも、自決など出来まい。
どんな手を使ってでも、あの狸は止めてくる。
それでは、三成が悲惨な目にあってしまう。
「三成、我と約束してくれ。」
「なんだ、約束?」
「さよう。我とこの世で最後の約束よ。多少、無茶を言うが、最後だからな。」
大谷は愉しそうに微笑む。
ー楽しくなどないがな、生前の三成との出来事を色々思い出すのよー
「刑部、何だ?」
三成は、また涙を流している。
「そう、約束してくれ。もう、叫ばぬと。」
「…。」
唖然とした顔を向ける。
「ぬしは、目覚めて徳川を見ても、知らんぷりをせい。記憶が無いふりをするのよ。」
三成は、眉間にこれでもかと言うほど皺を寄せている。
「ああ…分かった。約束する。記憶がないと言うのは…」
三成は、困っている。
「考えも取り方よ。徳川を恨んでいる事の記憶が無いふりをするのよ。太閤殿を手にかけられた事を忘れれば良かろう。…フリをな。関ヶ原の戦いも、忘れたフリをいたせ。」
「何故だ?」
「やつは、まずは惑う。そして次に喜ぶであろう。欲深い男ゆえにな。しかし、その後は苦悩する。ぬしが記憶を取り戻す事に恐怖する。それを、傍観しておれば良い。ぬしが主導権をにぎりやれ。」
今まで手を出さずに居たものを、手を出せるかも分からぬ。
淡いかもしれないが、そんな期待をする。
こんなに無垢で綺麗な物を、今まで触れられなかった物を、ぬしは汚せるか、徳川?
「徳川の事は、徳川と思わねば良いのよ。出来れば、笑ってやれ。ぬしにする事は、非道の極みよ。内心…悟られぬようにな。微笑よ、微笑。」
三成は、唖然としている。頭に手を置き、何か考えているようだ。
……何か有ったら、ゆるりとこちらへ来やれ。
ぬしは、約束は必ず守る男ゆえな。
大人しい三成なら、幾らでも、こちらへ来れる術は周りに与えられるだろう。
「…刑部、私とも最後の約束をしろ。私がそちらへ行ったら、ずっと一緒に居ろ。」
「…必ず居やる。」
聡いぬしなら分かったであろう?
ぬしと会えるのはこれでお終まいよ。
…この姿ではな。
闇が、急に白く染まっていく。三成が、この曖昧な世界から覚めるのだ。
「そちらへ行かずとも!そちらへ行って、それから何が有ろうともだからな!私が叫ぶのはこれで最後だからな!」
「うむ。ではな。」
相変わらず、愉快な男だ。
ー またいつかー
大谷は微笑む。
end.
to be continu…
監禁されても、静かに自分を保って欲しいと思って書きました。
家三が一番好きです。