−淡く想う−
はじめくんは、女性と寝たいらしい。
そりゃあ、欲情するよね。
それが普通だもの。
最近、永倉がやたら、島原の女の事を話す。
斎藤は、その島原談義につかまっていた。
チラッと聞こえて来た。
「僕も行こうかな。」
割り込んで、ポツリと言ってみた。
「あー、残念。俺は今日出番だ。斎藤と行って来いよ。」
「俺はいい。」
「なんだよ。たまってんだろ?」
「行きたければ行けば良いだろう。」
何それ?僕が節操なしみたいな。
「斎藤、若いのにそれでいいのかよ!?そのままじーさんになっちまうぜ。」
「若い僕らに何言ってんのさ。」
新八さんとは違うんだからと、沖田は何気にひどい事を言う。
「若けーからだよ!柔らかい女を抱きてーだろ?」
「みんな新八さんみたいに、四六時中盛っているわけじゃないですよ。」
「何だよ、自分でするより健全だろ?どーしてるわけ?」
「…」
二つの冷たい目が永倉に向けられた。
「ま、いいけどさ。」
夕方
「なにしてるの?」
玄関に斎藤が佇んでいた。
「島原に行くんだろ?俺も行く。」
「行かないって言ってたじゃない?」
「気が変わった。」
散歩に出ようと思い、島原に行くつもりなど毛頭無かったが、はじめくんがそう言うなら、行かなきゃ悪い気がする。
「うん。じゃあ行こうか。」
一緒に島原までの道を歩いた。
橋を渡って、暗くなった通りを歩く。
だんだん、賑やかさが増して行く。
やっぱり行きたくない。
何より、何で、あのはじめくんが島原なんかに行くのさ?
女と寝るのを考えると、何だかムカつく。
うーん、何だか、
はじめくんが誰かに触られるのがムカつく。
「総司」
「はじめくん」
声が重なる。
「…帰ろうか。」
「ああ。」
何しに来たんだろうと思いつつ、道を戻る。
はじめくんも何で来たんだろう。
end