※死ネタです。注意。





君で良かった



最期は笑顔でと決めていた


嫌だ

嫌だな。

はじめくんと、もう会えなくなるのが。


目の前のはじめくんは、穏やかに微笑んでいる。


分かっているよね。
誰よりも僕を知っているんだから。


「はじめくん、気を付けてね。」

僕も笑う。

カッコ悪いじゃない。

死にたくないなんてもがく姿を、誰よりも見せたくない。

何より、僕はとうに、死を受け入れている。

でもね、好きな人を前にして鈍らないわけじゃないんだよ。

ただ、君が笑ってくれているから、僕は取り乱したりしない。


「総司、待っている。」

嫌だなぁ。

僕は行けないのに。

きっと、待っているのは僕じゃないかな。

「うん。必ず行くね。」

僕は笑う。


新しい世の中で、奥さんを貰ったり、子供を育てたり、僕が出来ない事をして、僕の分まで幸せになって欲しい。

「元気でね。」

「ああ。」


はじめくんは、あっさりと行ってしまった。

その、蒼い瞳が雫を湛えていたのに気付かないわけがない。


次に会うときも笑顔で。




end