※前の-かけひき-後の話しです。

ーほんとうはー



アホか、あいつは!
アホや!

あの後、疲労感で泥のように眠り、日が高くなってから目覚めた。
身体に痛みを感じる度に、怒りが込み上げる。

昨晩、シンタローが突然訪ねて来て、なり行きで、そう言う事をした。

アホは俺や…。
アラシヤマは、記憶を辿り、己を責める。
何が楽しくてシンタローと寝なければいけないのかと、絶望感に襲われる。

抵抗も出来なかった。
シンタローが、腹の底を見透かしていて、どうせ俺が止めるだろうと考えているのが分かっていて悔しかった。

止められず、止まらなかった。

アホや…。
布団に両手を付き、ズーンと落ち込む。

暫くそうした後に、
食料調達の為に、行動を始めた。
いつも以上に息を潜めて行動する。
絶対に、シンタローと会いたくない。

早く日本へ帰りたい。
その内、ガンマ団総帥が直々に来るだろう。
ハァーと、深くため息をついた。

その夜、深まった闇の中、ノックの音。
心臓が跳ね上がる。

本気で青冷めて、
音を立てずに扉へ近づいた。
開けるのを躊躇い、時間が過ぎる。

外の気配を扉越しに伺うが分からなかった。
だいぶ時が経ってから扉を少し開ける。

中の光が外へ漏れ、
扉から少し離れた所にシンタローが立って居た。

「どうしはりました?」

小さな声で尋ねる。

何も言わずに、扉に手をかけられた。
一歩後ろへ下がる。
もう、媚びへつらう態度は取らずに、素になっている。
 
「もう寝る所なんやけど。」

帰れコール。

「お前、俺と親友ごっこする演技やめたの?」

睨まれる。

「ああ、辞めましたわ。何か、痛い目見るだけみたいやし。」


何をしに来たのか、まさかまた身体を求めて?
いや、シンタローに限ってそれはない。
お互いに、大嫌いだ。
あんな事をして、後悔しているだろう。
恐らく、詫びに来たのだ。

「謝りに来たんだよ。」

!!へえー、あんさんでもそんな事しはるんや。
出かかった言葉を飲み込む。
あの、シンタローが意中通り素直に謝っている。
愉しい。

「別に、俺も悪いんやし。」

何か驚いた顔をしてはる。

「ああ、お前が俺と友達ごっこすんのが、すげー気持ち悪くて。」

「…」

あんな事にならなければ、計画どおりやわ。

「悪ぅおしたな。」

「痛むのか?」

「は?何言うとんの?ほな。」

何か、凄く、ムカつく事を言われた気が…。

「あ、待てよ、これ。」

何か、フルーツの盛り合わせ的な物を渡される。

「てめぇが挑発して、止めねーから、今日動けねーのかなと思って。」

は?挑発?

「巫山戯んなや!あんさんが勝手に盛ったんやろ!それに、俺はそないなヤワやないし!」

あ、ダメや。聞こえん事にしてやろぉ思ったんに!こいつ、馬鹿にしてはるの?

「は?盛る?男相手に気色悪ぃ!」

フルーツは手の中で灰になった。

砲撃と、炎が上がる。
二人の深夜のバトルは、深い眠りを起こされたオーディエンスによって止められた。


翌日以降、

「シンタローはーん」
と、アラシヤマは、友達ごっこを輪を掛けて始めた。


気味悪がりやがれ!このアホと思っているのは、アラシヤマとシンタローしか知らない。



end