※オリジナルなクラスメイトが出てきます。
士官学校。
―肝試しにて―
肝試しなんて、馬鹿げてる。
生徒同士の交流だの、何だの、あの親父が考えた行事だ。
チームワークなら、授業の模擬戦で散々鍛えられてるってのに。
ベターにアミダくじでペアを決める。
今更ながら、男同士で、面倒以外のなんでもない。
3人ペア。
「Aの人ー?」
各々の、ペア探しが始まる。
かったるい。
30人居る。
引いた、Jと書かれた紙を持って、相手が申し出てくるのを待つ。
「まだ決まってない人は?」
引率の高松が見渡す。
「シンタローさん、俺たち2人しか居なくないですか?」
同じJの、あんまり話したことのない、気の弱そうな奴が、恐る恐ると言う様子で話しかけて来る。
「やれやれ。アラシヤマ君。」
高松の声に、スッと、姿を現す。闇から出てくると言う形容が相応しい。
「わては、Jやて言うとりました。」
どうやら、主張しても素でスルーされていたらしい。
「げっ、アラシヤマと一緒かよ。」
アラシヤマがジッと睨み付ける。
Jで、もう一人組まされたクラスメイトは運の悪さにすっかり萎縮していた。
「じっ、Jって一番最後の順番ですね。シンタローさんと一緒なんてラッキーだな。」
媚びている、こう言う奴が一番嫌いだ。
「さっさと終わんねーかな。こんな子供だまし。」
ガチで出ると有名な所で、廃寺に行って、有るものを取って来る。有るものはそれぞれのチームで違う。
終わり次第解散。
あくまでも、和気藹々とした交流目的。
こんな奴らとどうすればいいの?
肝試しなんて、リアルでそっちのお仲間みたいのが同じチームに居んじゃん。
シンタローは、アラシヤマを見つめる。
やっと順番になった。
「シンタローさん、幽霊とか平気ですか?俺駄目なんですよ。」
3人目のそいつは明らかに怯えている。
こう言う人が混じってて、かなり、ハズレくじだと思う。
あいつと二人なら速攻で終わりそうなのにと思ってしまう。
ライトでまっ暗闇を照らし、眈々と歩く。後ろに震えているそいつと、スタスタ着いてくるアラシヤマ。
「ヒイッ!」
そいつはいちいち、怖がって止まっている。
ライトで色々照らしまくり。
「おい、怖がってる物の仲間みたいなのが後ろに居んだろ。」
「何か言わはりました?」
アラシヤマが睨む。
「袖を引っ張んなよ!だいたい、夜間の実践の時、どーしてんだよ!同じだろ。」
怖がりのクラスメイトのせいで全然進まない状況に、シンタローが、諭すように言う。
「だって、ここ、本当に出るって有名ですよ。暗視スコープも無いし。!あれ何!?」
ガサッと木が動く。
「鳥。」
…俺ら殺し屋じゃん。
ハァーッと、ため息をついてそいつを見ると、マジで青ざめて、ガタガタと腕にしがみついてくる。
「掴むなって!」
「すみません、俺、本当無理で。」
一悶着していると、アラシヤマがスタスタと先に行く。
「おい!逃げる気かよ。」
今までの経験上、3人で行動しないと後で何か罰則される。
「あー、あんなあ、あんさん。幽霊なんて別に怖ぉないでっしゃろ。総帥の息子はんが居るから、イタズラしてくる輩も居らへんやろうし。」
シンタローにしがみついているクラスメイトに言う。
「リアルでもっと怖いっす。ガチしか出ないって事じゃないっすか。」
総帥の息子呼ばわりに、シンタローは眉間に皺が寄る。
あー、ムカつく。
クラスメイトの腰はすっかり引けていて、しがみつかれて振り払うのを繰り返す。
「あーもう。」
いつまでも先に進めないと判断して、アラシヤマは、今にも発狂しそうなクラスメイトの手を握って歩き出した。
「え?」
意外な行動に二人とも吃驚していた。
「ほら、これで怖ぉないやろ。先に行かへんと。」
えーっ!?何で発火しないの?
「ありがとう。」
クラスメイトは、赤面している。
そいつは、触れたくても普段は絶対に触れられない男と手を繋いで歩いている。
いちいち、怖がってアラシヤマに擦り寄っているようにも見える。
「暑苦しいさかい、あんまり寄ってこーへんでくれまへん?」
文句を言いながらベッタリくっつかせてる。
何だよ、これ。
なんかムカつく。見たくねー。
今度はシンタローが二人を追い抜いて先に行く。
後ろから二人の会話が聞こえて来る。
「…ごめん、本当怖くてさ。」
「あんさん、夜の任務無理とちゃいます?」
「アラシヤマと一緒で良かった。俺、今までお前のこと勘違いしてたよ。」
「あー!キモイ!おめーらホモかよ!」
シンタローが振り返り、二人に怒鳴る。
「あんさんが、怖がって動けん人を突き放したからやろ。」
「すみません。」
アラシヤマが他人と手を握って居る姿がムカつく。
「俺が連れてってやるよ。」
「は?」
ドスッと、手刃が入り、クラスメイトは、アラシヤマの横で地面に倒れこむ。
それをシンタローは、ズルズル引っ張る。
「…あんさん、鬼やな。」
「きれいに落としただろ。こいつももう怖い事もねーし。重えのは俺だし。」
「はあ。」
「お前、ちゃんと前ライトで照らせよ。」
恐怖で気絶した事に口裏を合わせて、無言で廃寺に行き、対象物を持った。
「これ、宿舎まで戻るんだよな。こいつここに置いて行かねー?」
「いや、暗闇で目覚めて、発狂したらどないします?てか、宿舎まで、あんさん達の道を照らさないとアカンの?あー、シンタローが気絶させよるから!」
「うっせえな!お前がこいつに優しくしてるからだろ。」
「は、何言うてるん?」
アラシヤマは訝しげに見つめる。
「キモくて見てらんねーんだよ。」
「悪ぅおしたな。」
殺気が湧いたが、すぐに戻し、ライトで道を照らす。
無言で宿舎へ戻った。
(重え・・・)
何で俺、良く分からねー奴を背負ってんだろう。
でも、アラシヤマとベタベタしてんの見てるよりは全然マシだ。
[終わり]
因みに、幽霊役で待機していた同級生は、クラスメイトを引きずる総帥の息子と、道を照らすアラシヤマの殺気の異様さで、逆に怖くて出て来れませんでしたとさ。
出てきたら丸焼けにされる恐れあり。