斎→アラです.
ー惑い 1ー
同居人ができた。
「なんなんだ、この陰気な所は!」
などとウルサイ。
「ウルサイどすわ。傷が治りはったら、どうぞお好きにしなはれ。」
今はまだ、お腹の傷で、歩くのがやっとらしい。
何でわてが敵の面倒を見ないとあかんのやと考えるが、多少わてのせいやから、しょうがないな、と思った。
料理・洗濯・掃除、ああ、なんでわてがこんな、妻みたいな事をしとるんやろう。
お友達や!、お友達と思い、我慢する。
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それから何日か後。
「今日の、鶏肉の黒酢餡掛け、すげー旨かったぜ。見かけによらず、料理、すげー上手いよな。」
「当たり前や。小さい時からしてたさかい。」
「へえー。」
って!やっぱりこれは何かマズイ!
斎藤はんはもう、最初と比べて元気やないの!
これでは、まるで,,,。
「今日の片付けは俺がしてやるよ。」
「ああ、おおきに。」
「お前は座って休んでたら。」
すごく、笑顔で話しかけてくる。
はああああ!
これがお友達なんやろか?
何か、違ぅ気が。
そもそも、敵と本当に馴れ合って良いのだろうか?
「斎藤はん、片付けはわてがやるさかい、早ぉ、治しなはれ。」
そして、出ていっておくんなはれ。
一緒に暮らしてる以上、なるべく穏便に、それはいわなかったが、
ひきつった笑顔で、斎藤が持っていた食器を受けとる。
と、手を引っ張りそのまま抱き締められる。
ガチャンと、持っていた食器は地面に落ち、何秒か経過し、アラシヤマは発火するが、相手の能力でほぼ相殺された。
放され、また何秒か経過する。
「ああ、つい、反射的に抱き締めちまった。悪ぃ。」
反射?
「,,,も、もう、冗談きっついわ。わては男やさかい、いくら友達でも、次にやったら殺しますえ。」
なるべく穏便に、、、。
昔、女性と同棲でもしていたのか、聞く気もない。
相手は、不本意だったらしく、わざとじゃないと言って、首をかしげていた。
ハグやな、これは。ハグや。
昔、ロッドに、嬉しいときの感情表現だと聞いたことが有る。
お友だちはするものなのだろう。
でも、嫌やわ。
その晩、アラシヤマは、斎藤となるべく距離をとって、片隅で寝た。
夜。
便利なもので、この洞窟に暮らす二人は、炎で明かりを産める。
斎藤は道具にしか灯せないので、トイレに起きた斎藤は、近くに有った小枝に火を灯し、外に向かう。
「うん?」
ほの暗い空間で、アラシヤマが、いつもより遥かに遠くの、出入り口近くで寝ていた。
うわ、ジャマ!
と、思いながら、踏まないように、灯りを近づける。
と、綺麗な顔にハッとした。
いつも髪で見えない顔の全面が見えているから、余計そう思うのかもしれない。
え,,,。超美人じゃん。
斎藤はゴクリと唾を飲み込んだ。
引き寄せられる、不思議な魔性の魅力を感じる。
さっきの抱き締めたのといい、どうやら、自分はこの男が好きなようだ。
「ん,,,。」
アラシヤマが起きそうになり、慌てて、外に出る。
ヤベー。
斎藤は、熱を沈めるため、湖のほとりで暫く時間を過ごした。
ああ、斎藤はん、トイレか。
アラシヤマは、再び眠りにつく。
end