パプワ島 シン→アラにまだ気づいていない位。 

ーお風呂事情ー


月が出ている明るい夜、湖の水面を月光と星空が照らし、キラキラしている。

綺麗なこの光景も、もう見慣れたものだ。

暖かいこの島では、湖がお風呂がわり。
団員生活中の実戦などで、入浴できない環境には慣れているので、平気だ。

パプワくん達はお湯を沸かして、温かいお風呂に入っているようだ,。
余所者にそんな待遇は有るはずがない。

若干、いいなーとは思う。

「水浴びですか?」

服を脱いで、水辺に律儀に畳んでいると、湖に棲む、ザリガニのナマモノが話しかけて来た。

「そうどす。ちょお、お邪魔させて貰ぅわ。」

ザリガニに話しかけていると、向こうから、植物から回復した、ミヤギとトットリの声が、近づいてくる。
目的は同じが、入浴時間が被るとは。
一人でゆっくりしたかったのにと、うっとおしく思う。

「あ!オメも水浴びに来ただか?」

隠れるかギリギリまで考えたものの、先に来たのは自分なのだからと、そのまま2人に対応する。
屈託のない笑顔を向けているミヤギと、自分を嫌そうに見つめるトットリ。

「俺が先に来たんやから、あんさんら、後で来なはれや。」

既に上着を脱いでいるので、そう言う。
つっけんどんな人を寄せ付けない態度は流石だ。

「一緒に入るっつー発想はねーだべか?」

「行こう、ミヤギ君。僕、アラシヤマと一緒は嫌だっちゃ。」

トットリはミヤギに声をかけるが、ミヤギは、入る気満々で、上着を脱ぎ始めている。
考えて見たら、この島に来た目的は一緒の部隊の者同士だ。
トットリも渋々と脱ぐ。

「こうして見ると、オメも色白だべな。」

「はあ。」

ポチャンと、二人は湖に入る。
白人のミヤギと、色白なアラシヤマ。
空を映している紺碧の水に、真っ白の身体が、まるで発光しているかのように綺麗だ。

「これが温泉だったらいいっちゃのにね。」

トットリが、渋々入ってくる。

温泉?

「ああ、温泉懐かしいべ!」
日本人の血が騒ぐのか、国に帰りたい、辛気臭い空気が流れる。

アラシヤマは、ザリガニのナマモノが居なかったら、能力で簡単に温かく出来るのにと、思っていると、
こんな時に限って、不運は重なる。

人の気配。
向こうからやって来たのは、パプワとチャッピーとシンタロー。
和気藹々と会話をして近づいてくる。


「うわ。こんな状態で、どうするべ? 」

「う,,,。」

もう、今から水から上がったら丸裸。
かなり滑稽な光景かも知れない。

「お前ら、何してんだ?」
三人の前まで来たパプワが声をかける。

「水浴びしとるんだべ。」

「そうだっちゃ。」

「ふーん。楽しそうだな。」
パプワは素直に言う。

アラシヤマは、シンタローに見られるのが何となく見下されているようで嫌で、黙っているが、物凄い視線を感じる。
屈辱感。

「オメらは何してるだ?」
ミヤギは言い返す。

「僕らは散歩だ。風呂なら貸してやるぞ。なあ、シンタロー。」

「ああ。自分で沸かせよ。」

三人はイラァッとする。

「結構だっちゃ、僕らはこれでいいし、早く秘石を取り戻して帰るっちゃから!」

たまたま意見が一緒で、アラシヤマは頷く。

「さっさと帰りなはれ。見せもんとちゃいますえ。」


「あれ、アラシヤマ、居たの?」

さっきまでジロジロ見てたくせに、シンタローはいつも通りのパターンで言う。
ムカツクけど、水から上がるに上がれない。

「よくそんな冷たい水に入れるな。僕なら日中に入るぞ。」

パプワは、歩いて通りすぎていく。

「いつ入ったって僕たちの勝手だっちゃね、ミヤギくん。」
「んだべ。日本人は夜に風呂に入るだ。」
「こんなにキラキラして綺麗だっちゃし。」
トットリとミヤギは言いあっている。


「子供のおもりとは、随分堕ちたもんどすなあ。」

パプワを見つめながらまだこの場に止まるシンタローに、嫌みを言ってやる。

「うっせーよ。オメエ、何、馴れ合ってんだよ。」

ミヤギたちに目をやりながら言う。

「!?同じ目的でこの島に来た仲間どすから!」

アラシヤマは同意を求めて二人を見るが、ミヤギとトットリは聞いていない。

「独りで入れよ。」

ボソッと言ってシンタローは去った。
?そんなに、自分を孤独にしたいのか、相変わらずムカツク。

「そろそろ行くべ。」
二人は、ザバァッと上がっていく。

アラシヤマは暫く星の湖に浮かんでから、遅れて帰路につく。
キラキラ。
空も、水も。
ただ、シンタローだけがムカツク。


今度は、もっと真夜中に入ろうと決心した。



end