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ー終わる間際ー
発火出来ない。
余程体力が無くなったのだろう。
サイコキネシスを使える人間が、己の能力を使えぬ程消耗するのは、大ごとだった。
痛みも感じない。
ヌルヌルした温かい液体が、身体をつたう感覚が、自分の重症な具合を否応にも感じさせた。。
指を伝って、ポタポタと赤い液体が地面に落ちる。
発火,,,
発火,,,
この能力のせいで、孤独な幼少期だった。
忌み嫌われた。コントロール出来ずに被害を出した。
あんなに発火しないようにと、師匠に教えられて来たのに、今は出来ない。
何故かおかしくなってしまい、口角が上がる。
要らん時はできよって、なんて不器用なんだと。
師匠、あの人が父であり、その人に預けられた時から、家族だった。
もう一度会いた・・・,いや、
こんな不甲斐なさを見せたら、逆に殺されるだろう。
会いたい人・・?お母さん。
どんな人かも良く覚えていないけれど、会いたい。
顔は覚えている。
良い所の血筋、世が世なら姫と言う人だったそうで、そのせいか、話した記憶が無い。
自分を見つめる切なそうな眼差しと、高い柔らかな声質は、何を言っていたのか思い出せないが、悪い人ではないとだけは分かる。
温もりを知らずに育った。
誰かに、母にさえ抱きしめられた記憶さえない。
愛されたと言う経験が圧倒的に足りなかったのではないだろうか。
死間際って、よお分からん『母』にすがるんやなあ。
茫然と、他人事のように思って居た。
うん?
騒がしくなり、目の前に居るのは、味方の隊服だった。。
切迫した顔で、何かを言われる。
援軍が間に合ったらしい。
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救護のテントに運ばれて、横になり処置をされた。
止血をされ、点滴をしてじっとしていると、体力が戻って来た。
ベットに横になったまま、右手を肘から上げて、人差し指にポウッと火をともしてみる。
「何してんのお前?」
感慨を感じるよりも早く、声が降りかかった。
顔を向けると、自分を見下ろしているのは、大嫌いな総帥の息子さん・シンタロー。
「べっ,,,」
別になんでもないからあっちに行けと言いたいのに、言う気力も無くてやめた。
無傷なシンタローは、援軍だ。
わざわざ何でこんな救護テントに来ているのか?自分の憐れな様子を見物に来たのかと思ってしまう。
実際あり得る性格だからだ。
発火出来るように回復して、イライラしてきた。
うー、殺してやりたい。
そうこうしている内に、引き上げで、怪我人が自団の飛行船に写される。
「ほら、肩貸してやんよ。」
シンタローは、寝ている自分を無理に起こそうとする。
何が悲しくて、こんな自分を笑いに来た奴に助けられないとアカンのや!!それに、立てそうにもない。
「触らんといてくれます!何が悲しゅうてシンタローなんかに!!・・・おなごはんに抱かれたい。」
先程、母の事を考えて居たのとリンクして、つい、馬鹿なことを言ってしまった。
何か言われると思いチラッとシンタローの顔を伺うと、険しい表情をしている。
酷いことを言いすぎてしまったのかと、考えているうちに、担架にのせられ、運ばれる。
シンタローはスタスタと、飛行船に戻って行った。
人に愛されたいと言う願いは、後日叶うことになるが、分かるはずもない。
end