−指輪−


報告書を持って来たアラシヤマの、左手薬指に光るそれを見て、総帥はご機嫌ななめ真っ最中。

「言うときますが、わては、したくて結婚したんとちゃいますえ。あんさん達のせいどすから。」

分かってるけど、ムカつく。
キラキラ光るその光が、嫌でも目に入ってくる。

「それ、ダイヤモンド?」

「ああ、そうどすわ。」

ウマ子と買いに行った(ムリヤリ買いに連れていかれた)のを思い出してブルーになる。

永遠の誓いってか?
あームカつく。

シンタローは依然何も言ってないが、怒ってるのが分かる。

「せやから、あんたらのせいどすやろ!」

あんなに結婚しろと賛成してはったのに、今更なんなんや。
わては、嫌やってあんなに言ったのに。
今だって、よく分からない。
アラシヤマは、ハアッと、小さく溜め息をついた。

「なあ」

シンタローが声をかける。

「なんどす?」

「俺と誓わなくていいの?永遠の愛。」

は?

「ちこぅてたし。…アホ」

それを、あんさんらは・・・。

「何?聞こえねえ。」

「クリスマスも誕生日も、盆も正月も、みーんな妻と過ごさなアカンようになると思いますが、同じお墓にも入れまへんが、わては、物凄ぉ好きな人が居たんどすわ。」

アラシヤマの沸点が静かに切れる。

(うっわ、キツっ。)
シンタローは心臓に釘を刺されたかのようなダメージを負った。

「・・・アラシヤマさん、今更ですが、愛してる。」

「え? 聞こえへんかったどす。」

アラシヤマは、若干笑っている。

「あーもう!帰れ帰れ。てめえなんか、ウマ子と」

途中で、唇で塞がれた。




end