新体制 ぐだぐだ。好きだと気付く話し。

オリジナル女性との絡み注意


―好き―




女を抱いている。
相手は、どこだかのお嬢様で、誰が見ても美人。

柔らかい身体。いい臭いがする。

容姿がタイプだった。
黒い長い髪が身体にかかる。
紫がかった黒い瞳。

キモチイイ。

甘い声が絶え間なく響く。

欲を吐き出し、横になる。


「ねえ、私達いつ結婚する?」

は?結婚?超ぶっ飛んでる。付き合ってもねーし。

「何言ってんの?出来るはずないだろ。」

赤い手形が頬についた。

俺は何を考えて居たんだろう?
ただ、キモチ良ければ良い?
そう言うわけでもないのに。



翌日、


たまに社食で昼食を食べていると、いつもの面々がやって来る。
と言うか、総帥に近づけるのはこの面々くらいだろう。

「シンタロー、昨日の美人、どうだったんだべ?」

「おめーはどうだったんだよ?」

ミヤギは、欧米系の、いかにも肉食な女性に見つめられていた。

「オラはそれなりだったべ。」
「僕もだっちゃ。」

トットリがフォークを加えてミヤギを見つめる。

「オメが一緒に出てった女、いかにも真面目な感じの女だったべ。よっぽど本気なんだと思っただ。」

「僕もそう思ったっちゃ。あーゆーのは面倒くさそう。」

「ああ、面倒くさかった。結婚だのなんだの言われて。」

思い出して、フォークが止まる。

「うわー。」

二人は青ざめている。

「メンヘルってやつだべ?」

「怖。そんなのと間違っても遊びたくないっちゃ。」

「相手を選ばないとやばいべ。次期総帥なんだから!」

こんなチープなパーティーで、相手も本気なはずないと思った。

そう、所詮遊びだろ。
遊び・・・
遊びたかったんだろうか?
身体は正直で、そりゃあ、女を抱きたい、したい。

でも、結婚なんて言われたら冗談じゃない。トラウマ。


長机のずーっと端っこに座っていたアラシヤマが、食事を終えて席を立った。

「あ、アラシヤマ、今度はオメもパーティーに出るべ。」

ミヤギが声をかける。
創立パーティー、お誕生日パーティー、何たらパーティー、何かと理由をつけて、パーティーをしている。
外部との接触、懇親、外交的な意味合い。

それは、女性と親しくなれる場でもある。

パプワ島から帰って以後、アラシヤマと俺たちは友達関係だ。
あんなに奴を嫌がってたトットリも、来たらどうかと頷いている。


「わては、いいどすわ。」

予想どおりにつまんねー奴。

「ちょっとちょっと」

二人がアラシヤマを手招きする。
嫌な予感がする。

「オメ、もしかして童貞?」

やっぱり嫌な予感的中。

「ちっ、ちゃいますわ!何歳や思うてはるんや!」

アラシヤマは耳まで赤くなってる。

童貞…なのかな?
あの島で俺と……

「何でシンタローも、赤くなってるんだっちゃか?」

やばい、思い出してしまった。
顔を背ける。

「シンタローなんか、昨日、一度ヤっただけで求婚されたらしいべ。」

「どうでもいいだろ!」

なんで、アラシヤマなんかに言うんだよ!

「へえー。大変やな。」

「オラ達がフォローしてやるから、来るといいべ。部屋にいても勿体ねーべ。料理も旨いし。」
キラキラした目で見つめてくる。

「溜めてると身体に悪いって聞くっちゃよ。黙ってれば美形なんだから、アラシヤマは喋らなければより取りみどりっちゃ。」

トットリは相変わらず毒舌だ。
アラシヤマは、苦渋な顔でシンタローを見つめた。

「ああ、お前も引き込もってねーで、来いよ。」

「そうどすな。今度行きますわ。」
はにかんで、場を去る。

昔とかなり変わった。
嫌味も拒絶も無く、小馬鹿にしたり、喧嘩を売ってくる事も無い。
改めて驚いてしまう。

それを二人も思ったらしく、取っつきやすくなったと笑う。



***



夜。シンタローは、微睡みに身体を預け、寝入ろうと、ウトウトしていた。

昼の話しを思い出す。

結婚なんて嫌だ。
一人の人間に鎖につながれるようなものだ。
でも、あそびでも女としたら、万が一、子供が出来てしまう。

「結婚…。」

うわー、墓場ー。

目をギュッと瞑ると、昨日の女性の顔を思い出す。

容姿がタイプだった。白い肌、紫がかった黒い瞳…。
あれ、俺って金髪碧眼が好きだよな。

ウトウトしていたせいか、凄い事に気付いてしまった。

あれって…。アラシヤマでいいや。

子供も出来ないし、気持ち良かったし。美人だし、…

!!

「ホモじゃねーし!!」

自分の思考に驚愕して、ガバッと布団から上半身を起こす。


NO、ホモ!STOP!俺の思考!

キモイって…。
だいぶ落ち込んで、今度こそ眠りにつく。


***


数日後の事だった。

パーティーに、こないだの女が、また来ていた。
明らかに俺を探している。

また、結婚とか言われるわけ…。

ヤバイと思い、去ろうとするが追ってくる。
ウぜえ!

「あの!こないだはすみませんでした。」

かなり遠くから声をかけられる。

「いや…」

俺の方が、ごめんなんだろうな。面倒くせえ。

「その、私、結婚とかいいんで、付き合って下さい。好きなんです。 ずっとずっと好きだったんです。」

予想外な発言だった。付き合う?
好きだから。

何か、それって…。
バラバラなピースがくっつくように、思いが纏まってくる。

意識してしまったせいで、伏し目がちに震えている瞳が、まさしく、奴にそっくりに見える。

子供が出来る心配が無いからとか、適当にしたいんじゃなくて、
俺は、…アラシヤマとしたい。
きっと、この女の道理でいけば、付き合いたい。

今までの、色々な出来事が思い出されて、他の誰かじゃダメだと気づく。

目の前の、外見が好みの、この女性でもダメで、

あんなに憎たらしいのに、それも含めて、誰も知らないような事も、いい所も、悪い所も、あいつに惚れている。

「ごめん、俺、好きな人が居るんだ。」

女性は、目を大きく開き、顔を見つめる。また叩かれると思ったが、悲しい目をして走り去った。


気持ちが収まらない。
今すぐ、会いに行こう。


―続く―



アラシヤマさいどへ