※軽く、性的表現が入っています。注意。
最初から終着まで
10年程を駆け抜けます。他ssとは違う次元の話し。



― you are ―


「負けたらどうする?」

シンタローの顔がニヤリと意地悪く笑った。
絶対に負けないと言う自信がムカつく。

「あんなあ、言うとくけど、今の所、俺の95勝99敗やからな!」

要は、ほとんど五分や!と、アラシヤマはくってかかる。

1年の謹慎処分が解かれて、アラシヤマが授業に復帰してから、今まで相手になる奴が居なかったシンタローだったが、
アラシヤマがかなり強いと分かり、二人で勝負する事が多い。


お互いに因縁を持っているのもある。
アラシヤマは、1年間も理不尽に謹慎された事を恨んでいるし、シンタローは、初対面で火傷させられた事を怒っている。


「じゃあ、今日で記念すべき100勝目か。」

「アホ、俺が先に100勝したるわ!」

殺気を纏う。

「そうだ、先に100勝したら、相手の言う事を聞くっつーのはどうだ?」

アラシヤマが繰り出した蹴りを右腕で止めて、シンタローは言う。

「フェアやないやんか!俺はあと5勝必要やろ。」

狡い奴めと、嫌悪感が増す。

「勝てねーの?」

挑発してみる。

「後悔しても知らへんからな!裸で校内一周させたる!」

「ふーん。じゃあ俺も裸で相手して貰おうかな。」

何を言ってるのか分からなかったが、負けたら嫌な予感しかしない。

炎がいつもの三割増しで全力で上がる。
が、相手もいつもより強かった。

「どーゆー事や!いつも手ぇ抜いてはったんか!」

ボロボロになりながら、シンタローを睨む。

「裸で校内一周してたまっかよ。」

ダメージを負っているシンタローは、呼吸を整えると、座り込んでいるアラシヤマの腕を引く。

「なんや?」

「相手させるって言っただろ。」

まさかと青ざめるアラシヤマを、シンタローは真面目に見下ろす。

死ぬ気で戦闘をした状況と若さも相まって、性欲が張り詰めている。

シンタローは、自室にアラシヤマを引きずるように入れると、ドサッと重なった。

「この、悪趣味め!死ねや!」

悪態をつきながら、約束してしまった事を破れない律儀な性格は、要求を受け容れるしか選択が無かった。

「俺なんか抱いて楽しいんか?言いふらしたる!」

「最高に楽しいぜ。お前が俺の下で屈服するしかねーと思うと。言えよ。俺に抱かれましたと。」

服を乱暴に脱がせながら、ニヤリと笑うシンタローに、アラシヤマは本気で恐怖を抱く。

「いっやや!」

「約束守らねーの?」

くっと、アラシヤマは炎を静めて、戦闘の後で、ドロドロなまま、無理やり熱を捩じ込まれた。

シンタローは、支配欲と、征服感も満たされて、箍が外れたように、何度も突き上げる。

アラシヤマが、涙を流して悔しがりながら、自分が与える快楽に落ちていく様は最高に燃えた。

アラシヤマは、声を漏らさないように堪えるしか無かった。



朝、目覚めたアラシヤマは、ベッド周りに散らばった服を適当に着て、ヨロっと、自室へ戻る。
惨めで悔しかったが、シンタローが自分の中で恍惚とした表情で欲を満たす様は少しおかしかった。






パプワ島で再開した時、何事も無かったかのように接しられた。
二人きりになる事も無かったし、
対サービスの共闘を頼まれた時も、ナマモノは空を飛んで居るし、
「友達」だなどと言われた。

「友達」と言われて嬉しかった。
共闘する内に、わだかまりも解けていった。
いい奴だと素直に思った。

もうあれは、犬に噛まれたと思って忘れようと思う。


島から戻り、新体制になった。


自爆技を使った自分を、総帥になったシンタローは何度か見舞いに来たらしい。

意識を取り戻したら、視界が広かった。

「お前、髪切ったの?」

「第一声がそれかいな。」

シンタローは、情事を交わした夜に、自分だけが見ていた均整のとれた顔が周囲に晒されるのを不服に思った。

新しい役職に就き、暫くたった頃、
夜に来訪者が有った。

島から帰って以降、ミヤギとトットリや、コージ、特選部隊の面々がたまに来訪していた。

その日、廊下に立って居たのは総帥だった。

「なんどすか?」

扉を開けるや否や、ガバッと抱きつかれ、壁に押しやられた。
唇を奪われる。

「シンタロー、なんのつもりや?」

扉はひとりでにガチャと閉まる。

「なあ、心友、抱かせてくれ。」

「なぜサカっとるんや!?ふざけんな、燃やしますえ!」

「燃やしたければ燃やせよ。」

その顔は、切なくてたまらないと言ったふうに見える。

「何があったん?…あんはんを燃やせる筈ないやろ。」

シンタローは、アラシヤマを引っ張り、ベッドに連れて行き、押し倒す。

何が有ったのだろう?体制の転換による内部の鎮圧や政務に手を焼いていたのは目に見えていた。総帥の重圧も有るだろう。

だが、おかしくないか!
何故自分が!

何も言えないまま、なすがままにされる。

「やっぱり、お前が一番燃える。」

笑った顔に、狂気を感じるが、キュンと胸が高鳴るのを感じた。

やっぱり、おかしいわ!何故、シンタローに抱かれとるんや。



「アラシヤマ、俺を好きか?」

「なっ?」

何を?

「好きって言えよ。」

快感を与えながら言ってくる。
凶悪な刺激に馬鹿になりそうだった。

「ほら、言わねぇと、ヤメんぞ。」

「…好きや。」

もう、いっそ、馬鹿にでもなってしまえ。
何度も「好き」と言わされた。

言う度に、胸が高鳴るのを感じるのだから、やはり馬鹿になったのだと思う。







PAPUWA島に行くまでに、何度も身体を重ねた。
身体の相性が、シンタローが一番燃えると言うように、確かにいいのだと思う。
女を買う手間も省けるし、女とするよりもイイ。

すっかり、アブノーマルなそっちの人間に開花させられて居た。

PAPUWA島で久々に会って、相変わらずジャレたりしていたが、前の島と同様に、そう言う事はしなかった。

常に周りに人やナマモノが居るのと、島の神聖さを感じて居る。おそらく向こうも。

処理は自分でしていたが、不思議と、シンタローとする時の事を思い出した。

「好き」だと、毎回言わされていたが、本当に好きになったような気がした。

ただの性欲処理なのに、馬鹿みたいだ。

身体を重ねると、不思議なもので、「情」と言うものが確かに湧く。
命懸けで守ろうと思い、勝手に献身していた。

昔は、殺してその座を奪ってやろうと思って居たのに、すっかり変わってしまった。


島から帰って来て、またすぐに、シンタローは来訪した。
以前と同じように抱かれる。
「抱いて欲しい」とまで、言えるようになった。

久々の感覚に、また頭が快楽に溶けそうだった。

「好きだ。」

は?耳元で聞こえた、聞きなれぬ言葉に、急速に意識が現実に戻る。

頭が、理解した時に、涙が出て来て、ボロボロに泣いていた。

「何泣いてんだよ!」

シンタローは、気付いてギョッとした。

「は…せやかて……」

好きだなんて、気付かなかった。
そう言う顔をしたのが伝わったのだろうか。

「好きでもねーのに、男なんか抱くかよ。」

そうだったのか。
涙がとまらない。

「泣くな。」

額にキスが優しくおりてくる。


いつの間にか、好きだった。

最初に出会った時から初まっていた物語り。



ーーENDーー



*番外*

告白以前。

パプワ島で別々に分離した、シンタローの内に居たキンタローは、PAPUWA島で、奇妙な光景を見た。

島から帰還後。

「シンタロー、何故アラシヤマに好きだと告白しない?」

キンタローが、真面目に言うものだから、飲んでいた珈琲を吹き出してしまった。

「行儀が悪い。」

「悪かったな。だが、そうさせてんのは、お前だよ。」

キンタローに向かって、睨むように言う。

「私は、お前と同体、内に居たのだから分かる。お前は、アラシヤマを好きだ。初めて彼を見た時から、気になって、声をかけられなかった。昼食時に声をかけたが、燃やされて酷く傷ついた。初めて彼と繋がった時、歓喜で」

「ヤメロよ!」

聞きながら、フルフルと震えていたのが、限界がきた。

「私も、アラシヤマを好きだ。」

「は?何だって?」
キンタローが、あいつを?アリエナスギテ…

「彼は優しいし、美しい。お前が見て居たものだ。彼を狙っている輩も沢山居るが、皆燃やされて居る。シンタロー、心は言葉にしなければ伝わらない。」

ずっと、俺の中に居て、言葉も何も持てなかった彼の話しに、悪態などつけない。

「いいか、言葉にしなければ、伝わらないんだ。」

「ああ、分かったよ。好きだと言う。だから、キンタロー、取るなよ!奴は俺のだからな。」

赤くなってまで言う事か。
これを、本人に言えばいいのにと、キンタローは思う。

「人に向かって指を指すな。あと、それはお前の一方的な考えだ。アラシヤマの返答次第だな。」

キンタローは、パソコンを閉じて脇に挟み、部屋を後にする。


シンタロー、後で感謝しろよと、紳士は思った。