ウマ→アラ→シンです。

−指輪を買いに−


「アラシヤマァ、わしたちは、夫婦になったんじゃけん、指輪を買いに行かねばのう!」

「え…。ウマ子はん、本気どすか?」

久しぶりに、ガンマ団内の社宅にウマ子が押しかけて来た。

彼女は照れた素振りをしている。

「当ったり前じゃあ!今から買いに行くんじゃ!」

「ウマ子はん、わて、今日は久々の休みやから、家でゆっくり、一人で過ごしたいんどすけど。」

アラシヤマが苦笑しながら言うと、ウマ子の顔が曇る。

papuwa島で、強引に結婚させられた。
それから、一緒に暮らす気( 暮らせる勇気 )もなく、ガンマ団の社宅を出て居ない。

本当は団内は女人禁制だが、たまに訪ねて来るウマ子に誰も文句を言えないでいる。
週に一度程度だろうか。

毎日一緒に居てくれる人、彼女を本当に愛してやれる人と結婚するべきだと今でも思う。
それが出来そうにないのに、周りは全く無責任だ。

(それでいい、ウマ子はんも変わってますわ。)

いつでも解消したいが、彼女は、今の状態でいいらしい。
他に好きな人が出来てくれればいいと思う。
こんな自分のどこがいいのか、理解出来ない。
理解出来ないのは彼女だけではないのだが。

キスを迫られて、強引にされた事は有るが、申し訳ないが、それ以上は無理だ。
どうやって・・・
自決してしまいそうだ。

でも、放っておかれている彼女が可哀想になる。

「じゃあ、一緒にお出かけしましょうか?」

「ほんとか?」

ウマ子は目を輝かせて喜んで居る。

いつものように、街に行くと、ウマ子に手を引き連れて来られたのは、やはりジュエリーショップ。

「いらっしゃいませ…。」

店員が様子を伺い、近寄って来ない。


「キャーッ、かっわゆーい!ウマ子、これがいいっ!」

一目散に一カウンターの目の前の結婚指輪コーナーに行き、指輪を指差す。

この人、下見してはったなと思う。

指のサイズを測らせて下さいと言い、輪っかをはめられる。
ウマ子はだいぶ上のサイズを、女性用に特注するそうだ。

「文字はお入れ致しましょうか?」

店員さんがはにかむ。

「どうしはります?」

ウマ子を見ると、キラキラした目で見つめて来る。

渡されたカタログを開いて例文を見ると、どれも、永遠に愛するなどと言った内容だ。
冷たい汗が流れる。

「あ…I wish you happiness. でどうでっしゃろか?」

例文の中で一番適切そうなのを指さした。

「よう分からんが、アラシヤマが決めたんなら、それで、ええのう。そこに、お互いの名前を入れて下さい。」

さらりと、嫌すぎる事を付け足されたが、しょうがないと思う。

注文して、外を一日中つれ回され、現地解散で帰路につく。

気を使ったのと、一人じゃ絶対に行かない所、人混みに長く居て、滅茶苦茶疲れた。


帰り道、ウマ子と別れてから、いつもの運転手が、あの人はお友達かと聞いてきたので、妻だと言ったら、ドリフトが甘くなって事故る所だった。




end